宇宙SFを考える時に必ず出てくるウラシマ効果。光の速度に近いほど早く移動する宇宙船の船内(正確には地球と宇宙船の間の相対速度が大きい)では、時間の進みが遅くなるという、あの現象である。庵野秀明監督の『トップをねらえ』でストーリーの中核として導入され、素晴らしい感動のドラマを作り上げました。新海誠監督の『ほしのこえ』でも同様です。映画『インターステラー』でも相対性理論が高度に活用されていました。
では、どれほどの速さになれば、どれほど時間の進みが変わるのか、それを計算するにはどうしたらいいでしょうか。
こうした映画やアニメなどで、ウラシマ効果が出てくるとき、この時間のズレの値はちゃんと計算してストーリーにしているのかどうか、その算出方法がわからなかったので今まで検証できませんでしたが、少し勉強してみました。学んだことをここにまとめておきます。
なお、ここではわかりやすさ優先で、厳密な説明、計算をしていません。
いきなり結論ですが、以下で計算ができます。
静止系座標にいる観測者から見たとき、運動系座標にいる時間は以下の比率となります。このとき運動系座標は速度$v$で等速直線運動をしており、$c$ を真空中の光速度、$t$ を静止系座標での時刻、$t'$ を運動系座標での時刻です。
$$ \Large t' = \sqrt{ 1 - \cfrac{v^2}{c^2} } \quad \Large t $$
実際の宇宙船では、静止状態から加速状態を経て、等速運動になり、また加速(減速)して静止するという過程となりますので、実際の時間の変化量はもっと複雑な計算(微小時間ごとの積分)が必要になりますが、ここでは概算として等速運動のみ考えます。
例として、運動系座標にいる宇宙船は光速の$30 \%$で等速直線運動をして地球から離れているとします。そのとき地球との時刻はどのように変わるかを考えます。
光速の$30 \%$ですから、$v = \frac {3}{10}c$ です。これを上の式に代入します。
$$ \Large t' = \sqrt{ 1 - \cfrac{ \cfrac{3^2}{10^2}c^2}{c^2} } \quad \Large t $$
整理して電卓で計算します。
$$ \Large t' = \sqrt{ 1 - \cfrac{9}{100}} \quad \Large t $$
$$ \Large t' = \sqrt{ \cfrac{91}{100}} \quad \Large t $$
$$ \Large t' = \sqrt{ 0.91 } \space \Large t $$
$$ \Large t' \approx 0.954 \space \Large t $$
よって、静止系座標の時計で進む時間の $0.954$ 倍が運動系座標で進むことになります。